会長挨拶

観察し,考え,創るバイオメカニズム





第23期(2024.4.1.~2026.3.31)
バイオメカニズム学会会長
大島 徹
(富山県立大学名誉教授)


幼少のころから小動物が大好きで身の回りには,いつもウサギ,ニワトリ,カメ,トカゲ,カエルなどを飼っていました.機械が大好きでいつも機械時計や自転車を分解したり組み立てたりしていました.両方できないだろうかと考えていたときにバイオメカニズムという言葉を知りました.義手の研究をテーマとし,最初の発表が1982年の第3回学術講演会でした.工学はもとより,医学,生物学など様々な分野の先生方から,それぞれの視点から多くのアドバイスをいただくとともに,新たな分野を学ぶ機会と新たな挑戦への活力をいただきました.また,学会とは,競い合う場であると共に学びあう場であることも知りました.バイオメカニズム学会との出会いによってその後の40年ほどの私の道が定まりました.義手にはじまり義肢装具,電動車椅子などの開発,立位バランス評価,二関節筋と四肢の運動制御など,さまざまな分野に関わりながら,学びを続けることができました.観察し,考えることに終わらず,創り上げることにバイオメカニズムの魅力があります. 2024年度から会長として歴代会長の本学会への熱い思いを引き継いでいきたく思っております.アットホームな中にも厳しさのある本学会での皆様の学びが社会へ還元されることを願っております.

なんだかわくわくする





第22期(2022.4.1.~2024.3.31)
バイオメカニズム学会会長
江原 義弘
(新潟医療福祉大学)


電気工学科に在学中に早稲田大学の文化祭のちらしが眼に入った機械工学科加藤一郎教授の筋電電動義手研究に関する特別講演会,面白そうなので出かけた.当時社会問題となったサリドマイド上肢欠損児のための動力義手が全国の大学で進められており,その報告であった.それまでリハビリテーション技術の研究開発はメディカル・ドクター主導で進められており,このプロジェクトは本格的に工学者もかかわるきっかけになったと思う.これは素晴らしい,自分の職業はこれだ,と将来の方向がこの講演会で決まった.別の興味の関連で北海道の大学院に進んだが,身が入らずに中退,東京に戻った.時間があったので,熊本大学や徳島大学など動力義手の研究者を訪問してまわった.加藤研究室の人工の手研究会にも出入りさせてもらった.毎月1回ほどの勉強会で手づくりの冊子が発刊されていた.慶応大学大学院に在籍中だった山崎信寿氏にもお会いしており,氏からいただいた博士論文はぼろぼろになるまで読み込んだ私のバイブルである.研究会は大きくなりシンポジウムが開かれるようになった.筋肉,ロボットの眼,触覚,人工の手の制御,2足歩行機械の発表などチンプンカンプンではあったが,なんだかわくわくした.会の名称がバイオメカニズム学会となったころから,スポーツ関連のテーマも加わり,さらに看護系のボディメカニクスやダンス・舞踏のテーマもあり増々わくわくするものが増えた.若い研究者にさらにワクワクを感じてもらえるよう微力ながら2年間務める所存です.

私を育ててくれたバイオメカニズム学会





第21期(2020.4.1.~2022.3.31)
バイオメカニズム学会会長
林 豊彦
(新潟大学名誉教授/自然科学系(工学)フェロー)


 本学会のウェブサイトには,この学会は「生物の形態や運動に魅了され,あるいはそれを新たな発想に役立てようとする,好奇心旺盛な人々の集まり」とある.私もその通りだと思う.工学,医学,体育,リハビリテーション,看護など,多分野の専門家から構成されているが,共通点は「生物の形と運動」.その多面性,多様性,学際性が本学会の最大の魅力である.

 私が最初に参加したのは第5回バイオメカニズム学術講演会(1984)だったが,本格的に参加したのは9年後の第13 回バイオメカニズム・シンポジウム(1993)からである.その経験は衝撃的だった.著名な諸先輩が自分で口頭発表し,他の発表に容赦なく質問していた.夜は部屋に集まって,ベテランも中堅も若手も酒を酌みかわしながら語りあっていた.そのとき,学問はこうやって文化として継承されていくのだと思った.優れた諸先輩は私のロールモデルとなった.

 あれから27年,すべてのシンポジウム(計14回)に参加し,12編の論文を自分で口頭発表した.論文集バイオメカニズムには共著も含めて20編が採録された.査読は厳しかったが,それに真剣に応えることで自分を鍛えることができた.昨年のシンポジウムで発表した後,自分なりに「学会の伝統を守った」という達成感があった.同時に諸先輩の足元にもおよばないとも思った.そんな感慨に浸っていたとき,予期せず会長職の依頼がきた.私のすべきことはただひとつ.私を育ててくれた本学会への恩返しとして,先達が守ってきた学問の伝統を次世代に引き継ぎ,よりゆたかにすることである.

バイオメカニズムとの出会い





第20期(2018.4.1.~2020.3.31)
バイオメカニズム学会会長
増田 正
(福島大学教授)


 バイオメカニズムとの最初の出会いは書店の本棚でした.バイオメカニズム学会では,他の学会でも一般的に見られるような形式の学術講演会を毎年開催すると同時に,2年に1回人里離れた場所で合宿形式の「バイオメカニズム・シンポジウム」を開催しています.そして,このシンポジウムで発表された演題の中から,特に興味深く優れたものを選定して「バイオメカニズム」として出版しています.海外の学会では,研究集会の後に論文を集めて出版することは良くありますが,日本の学会で定期的に出版を行っている例は,身近ではほとんど聞いたことがありません.1回目のシンポジウムの開催は1970年8月で,その内容が出版されたのが1972年3月でした.「バイオメカニズム」は一般の大きな書店にも置いてあったため,ちょうど大学に入学してすぐくらいの頃に第1巻に出会いました.読んでみると,筋肉,視覚,触覚,義手,二足歩行ロボット,さらにはヘビの匍匐運動に関する研究内容までも紹介した,他では目にすることの無い大変ユニークな本でした.

 大学を卒業後,国立研究機関に勤務して人間工学や福祉工学の研究に従事することになったため,バイオメカニズム学会にも入会し,これまでに学会誌の編集委員長も担当させて頂きました.この度,さらに会長まで務めさせて頂くことになりました.あの「バイオメカニズム」に出会ったときのワクワク感をこれからも維持発展できるように努力したいと考えています.

「人工の手研究会」から50年,半世紀!





第19期(2016.4.1.~2018.3.31)
バイオメカニズム学会会長
岡 久雄
(岡山大学大学院教授)


 バイオメカニズム学会は,加藤一郎先生(早稲田大学)が始められた「人工の手研究会(英名はSOCIETY OF BIO-MECHANISMS, JAPAN)」に端を発します.当時の「人工の手研究会月報」(本学会ホームページで閲覧可)を見ますと,「ロボットとサイボーグ」「家庭向けロボット」「宇宙の人間工学」「海中居住と人工えら」「南氷洋の捕鯨」・・・タイトルを見ているだけでワクワクします.現学会員の最年少は22歳,最高齢は89歳(2015年10月末),化石の発掘から舞踊,果てはガチガチの数値シミュレーションまで,人間工学,リハビリテーション医学・工学,整形外科学,スポーツ,看護学,人類学,生物学などの研究者が集って異分野交流をし,サロン的雰囲気を頑なに守っています.

 2016年4月より,本学会の会長を担当させていただくことになりました.「人工手研究会」から50年,半世紀が過ぎます。記念事業として歩行データべース研究部会を立ち上げ,「歩行データベース構築スタートアップ事業」(2016~2018年度)を開始します.前会長・山本澄子先生(国際医療福祉大学)のご提案によるもので,健常者,高齢者の歩行リファレンスデータを提供できる環境を構築し,学会員からのデータ登録やデータ利用がスムーズにできるように準備します.

 学会員の皆様の学会活動への積極的なご協力をお願いすると共に,会員でない方もぜひ一度,本学会の行事に参加してみてください.必ず,異分野交流とサロン的雰囲気にどっぷりと浸れること,間違いありません.

バイオメカニズムの世界へ





第18期(2014.4.1.~2016.3.31.)
バイオメカニズム学会会長
山本 澄子
(国際医療福祉大学大学院教授)


 バイオメカニズムという言葉は英語の辞書に載っていません.バイオメカニズムは「生体の形態・運動・情報およびそれらがもたらす総合的な機能を多面的に分析し,そこから得られた発想を様々な分野に応用すること」を目的に,約50年前に本学会の加藤一郎初代会長が作られた言葉です.このように名前がユニークなバイオメカニズム学会は会員構成もユニークです.上記目的のもとに,会員は人間工学.リハビリテーション医学・工学、整形外科学,スポーツ,看護学,人類学,生物学などさまざまな分野の研究者で構成されています.国内外に数多くの学会が存在する中で.このようにユニークなバイオメカニズム学会が50年近く継続してきた理由は.歴代会長ならびに会員の皆様の懐の深さにあります.この懐の深さが,異なる分野の研究者同士で対等に意見交換できる本学会独特の雰囲気を作り出してきました.年に一度の学術講演会,隔年で開催されるシンポジウムでは,通常の学会活動では出会うことのできない他分野の研究者との交流を深め,自身の研究にヒントを得ることができます.

 私は2014年4月から本学会の会長を担当させていただくことになりました.今まで培ってきた学会の伝統を継承しつつ,応用の方向にも力をいれて多くの方々が参加できる場を作っていきたいと考えております.会員の皆様の積極的なご協力をお願い申し上げます.会員以外の方はぜひ一度,本学会の行事に参加してみてください.必ず,研究者の知的好奇心が刺激される体験をしていただけると思います.


入会案内 論文投稿 歩行データベースの構築と利用

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